女優Xを探せ!

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 新しく始まるドラマの顔合わせ初日、颯斗は憂鬱な気持ちを抱えていた。平林社長から同級生役に萩谷美梨が決まると聞いていたからだ。 本来であれば顔も見たくない相手であり、紗綾を苦しめている張本人だと思うと掴み掛かりたい程の怒りが込み上げてくるが、紗綾を守るためにはそうしない事が最善だとわかっていた。 「監督の杉山です。皆さんよろしくお願いします。では主演の鈴木慶吾役、相馬颯斗さん」 杉山に手を向けられて、颯斗はその場に立ち上がり礼をした。 「よろしくお願いします」 一斉に拍手が湧き上がる。 「次にヒロイン、木村スミレ役のRIRIさん」 「よろしくお願いします」  次々と配役が監督から発表され、最後の一人の名前が呼ばれた。 「最後に慶吾の同級生、一条花役で萩谷美梨さん」 今まで名前を呼ばれていたのはドラマや映画で活躍している面々だったこともあり、萩谷美梨という名前に誰?という空気が流れ、立ち上がった美梨に見定めるかのような視線が集まった。 「あ、あのっ。このような役を頂くのは初めてなんですけど精一杯頑張ります。よろしくお願いします」  ガチガチに震えながらの美梨の挨拶に、まばらに拍手が送られた。平静を装ってはいたが颯斗の視線は冷たいもので、正面に座っていたヒロイン役のRIRIは黙ったままそんな颯斗を見つめていた。
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