女優Xを探せ!

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 ジムに入った紗綾は、パスを見せると一直線にロッカールームへと向かった。ロッカーは全て個室になっていて、他の客と顔を合わせることはない。シャワーを浴びてから、女優Xでもなく平凡な書店員の紗綾でもない全く別の人物になるようメイクと髪型を整えて洋服を着る。 持ってきたバッグを用意してあった鞄に押し込み、靴も履き替える。変身を終えた紗綾は、堂々と入り口から外へ出た。  最初の頃は、何もここまでやらなくてもと思ったが、社長が調べたところによると颯斗にも紗綾自身にも数社の記者たちが尾行を続けていることが判明した。まだ私たちの関係を疑っているものがいる。それに、女優Xの正体を突き止めようと記者たちが躍起になっていることが分かり、紗綾はかなり用心深く行動するようになった。   ここでバレてしまったら、せっかくの作戦が全て台無しになるだけでなく、書店で働くことも出来なくなるかもしれない。  外に出た瞬間、一人の男性と目が合った。スーツ姿だが、何となく違和感があった。この人が記者の一人かもしれない。何となくそう感じた紗綾は、真っ直ぐ帰らずにファーストフード店に立ち寄った。窓から男性を見ると、まだジムの入り口を凝視し、時々スマホで連絡しているように見えた。
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