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煎餅果子に温かい豆浆 (豆乳) 、茶葉蛋を持ち帰り、食べ切れるか自信はなかったが、とにかくテーブルに並べ手を伸ばしてみる。
八角やシナモン、クローブ、花山椒、に陳皮など、四日目ぶりに慣れた味付けの飯に早くも懐かしさを覚えた。
というのも、この家に連れてこられた翌日から昨日までの3日間、木瀬が届けてくれたのはフランス料理という、李子にととっては未知の食べ物だったからだ。
とはいえ、どれもこれも びっくりするほど美味しかった。
食べつけないサラダはほのかな酸味とオイルに包まれ、スープは舌触りも良くクリーミーだった。
ホイルに包まれた肉はとろりとした白いソースの下で適度な焦げ目がついているだけ。
中はふわふわ、外の皮はパリパリに乾いたハードなパン。
おまけにパイ生地を何層にも重ねた、香り高い苺のデザートまでついている。
冷たい料理を食さない文化の中で育った青年は、メイン料理である鶏肉のレモンクリーム焼きだけが温かいということにまず驚いた。
木瀬は『この食事は水無月さんの元同僚で現在はフレンチのシェフをしている方が作ったのです』と説明し、ついでに水無月はそのフランス料理店の敷地内に建てられた倉庫に住んでいるのだとも教えてくれた。
美味しさもさることながら薬膳料理同様、水無月が指示した料理とあって、李子はソースの一滴も残さず毎食全てたいらげていた。
三日間の外出禁止中、勉強用にとタブレットを与えられ、好奇心で触っていたら研究者レベルの講義が楽しすぎて一日はあっと言う間に終わった。
他にも初めて知る異文化、大げさに言えばチャイナタウンより外の世界にある様々な情報は、李子の視野を急激にそして大きく広げさせていた。
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