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「なるほど。
となると貴方は李子君が父の子でないと知っていたわけだ」
「すまないな。
コイツの両親が共に日本人であることは既に遺伝子レベルで証明済だった」
綾野はゆっくりと顔を水無月の方へ傾け、曖昧な微笑みを見せた。
何故水無月がわざわざそんなことをしたのか考え倦ねているようだった。
「貴方ですよ?
この子が娼婦の子で18年前にここ、花園街で生まれたのだと私に教えたのは。
、、、ほら、Hotel Shantung Bayで殺人があった日のことです。
私はあの日、この青年の出自を聞き、姿を目にした途端、間違いなく黒鱗の継承者、つまり私の異母兄弟だと思い込んでしまったのですが」
「李子を守る為だ。
コイツは桃姑界隈を荒らす割にはこの街から出たがらず、黒鱗の締役から目をつけられ後がない状態だった。
四六時中見張っていても消されるのは時間の問題だと懸念してたところにふとお前の存在が過ったんだよ。
老板の愛人になれば誰しもが迂闊に手を出すことはできないだろうとな。
まあ、問題はバイセクシャルでありながら女好きに寄ったお前をどう唆し関心を持たせるかだったのだが、幸いにもお前は年の離れた腹違いの兄弟を探している最中。
本来ならば自分以外の継承者など見つけ次第抹殺してやりたいところだろうが、故郷にいる大老板の手前そういうわけにもいかないと踏んだ。
ともすればてめぇの命が危なくなるからな。
だから大御所が死ぬまでは愛人として身近に置き、飼い慣らしておくだろうことは想像に易かった。
まあ、渡りに船というヤツだ」
水無月は未だ李子の両手首を纏めているロープを解き、脱がされた服を丁寧に着せてやりながら、皮肉な笑みと共に話を続けた。
「どこかにいるもう一人の黒鱗継承者の存在、その証がどうやら口の中に隠されているってとこまでは新生児を取り上げた中医の記録からわかっている。
それが痣らしいってこともだ。
そこまで調べ尽くしたのもお前が外に立たせてた刑事見習いの木瀬春馬だ。
発言はバカっぽいが情報収集能力にかけちゃまさしく天才だろ。
ああそうだ、ついでに教えてやるが桃姑の連続殺人事件の犯人とお前の異母兄弟は同一人物だよ」
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