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綾野は一瞬目を見開いただけでさして驚きもせず、その後天を仰ぎ大声で高らかに笑った。
「あはははは、、、、
そうでしたか。
いや、素晴らしい。
貴方がたの能力は正にこの国の国力だ。
特に水無月さん、貴方のような方には滅多にお目にかかれない。
何しろ我々と接触する為に危険な薬に手を出し殺人まで躊躇なくやってのけるんですから。
ですが、、、
どうでしょう? この大掛かりな芝居の最終目的が黒鱗の諜報行為だとしたら国家の犬過ぎやしませんか?」
ベッドヘッドに背を預け、大股開きに長い脚を投げ出している綾野は、部屋の隅にある冷蔵庫から水のペットボトルを取れと顎で水無月に指示をする。
水無月は求められた通りに冷えたボトルを手渡してやりながら答えた。
「犬か。
薬を嗜んでも罪に問わず、人殺しも黙認する組織が『飼い主』と言う点で俺とお前は何も違わないだろ。
しかも俺に限って言えば何匹もいる飼い主の生命線を握りつつ蜜もくれてやる特殊な部門にいるわけで、国家にとっては必要悪でもあるわけだ。
行動の全てが制限されない刑事部直轄の警察犬、そう俺を揶揄するならば光栄だ、正に天職だと思ってる」
ぐったりとした李子を慣れた手つきで肩に担ぎ、一纏めに脚を抱えると水無月はドアに向かった。
「コイツは返して貰うぞ。
代わりに男娼連続殺人犯兼異母兄弟を進呈してやるよ。
腹違いの弟を側に置いて飼い慣らすのも、そいつが殺人犯だと故郷の父親に知らせるか知らせないかもお前次第だ、好きにしろ」
「私としては日本の警察にお任せしても構わないのですが」
と背中に受けた水無月は足を止めて綾野に目を据えた。
「サツに渡せば死刑確実、お前としては手を汚さずに始末できるってことか。
だが遠慮する。
身内のゴタは身内で済ませてくれ。
それから、、、」
「わかってますよ。
我々にとって貴方は生かしておくべき人物だ。
李子君に関して今後一切貴方の怒りを買うようなことはしません」
『それと』と綾野は付け加えた。
「黒鱗に来る気があったら仰って下さい。
私が老板であるうちはいつでも歓迎します」
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