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春蕾はアイスのシングルを受け取って大きく口を開き噛りつく。
そこへ膝を折った木瀬がすかさず迫り口の中を覗いて目を輝かせた。
「ほうほう」
「なんだよ」
「いえ。美味しいですか?」
「美味いよ」
スタッフがドライアイスを封入する為に持ち帰りの時間を訊くと、春蕾は躊躇なく『30分保てばいいや』と告げた。
木瀬は大袈裟に首を捻る。
「おやや?
どんなに近場であっても毎回大量の固体二酸化炭素(ドライアイス)を依頼する貴方が、今夜に限っては随分と遠慮がちなのは何故ですか?」
「いつもはもっとたくさん配達させるからだよ。
いや待って、、、。刑事ってさ、一般人のそんな事まで調べるもんなの?」
「正しくは刑事見習いです。
個人情報とその日常行動を調べるのは僕の仕事兼趣味なのです。
とはいえ水無月さんから依頼された人物が対象ですが」
「ふぅん、そういうこと。
あの人実は俺に興味あったりしたんだ」
チラリと木瀬を横目で睨みつけたものの、春蕾の口は嬉しそうに歪んだ。
数分後、『お待たせ致しました』と手渡されたプラスチックバッグを春蕾が受け取ると、そのタイミングで木瀬が再び口を開いた。
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