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「Hotel Shantung Bayしかり、殺人事件があった現場の全てに貴方はいた。
どの客にも必ずクークアのアイスをねだり、注文の際は通常よりもかなり多くのドライアイスを付けさせていたはずですよ?
箱の中にも外にも」
「柔らかいアイスは嫌いだからね」
「なるほど、では今日に限っては違うということですね」
「そういう日もある」
「しかし不思議なことです。
僕が検証に入ったシャントンベイにはアイスが入った容器と箱はありましたが、何故かプラスチックバッグは無かったのです」
「いつも俺が持ち帰ってるんだよ、便利だから。
てか、、、あんたさ」
木瀬が会計スタッフに差し出す見たこともない色のカードに目を据えながらも春蕾は語気を強めた。
「俺を連続殺人事件の犯人だとでも疑ってるわけ?」
「正しくは確信です」
「どこに証拠があんだよ」
「今の会話で得ました」
「は?」
木瀬は二度目となる三段に重なったアイスを受け取り、慎重に口へ運んだ。
いくらか食べ、
「人は事実を述べる時でさえ二分の一秒くらい『間』というのがあるものだそうです。
しかし僕の質問に対しあなたの返答には全く淀みがなく、むしろ待ち構えているかのような反応っぷりでした。
これはあなたが『答えるべきことを事前に用意している』という裏付けになるのです」
「そんだけ? バッカじゃね」
「事情聴取の天才と呼ばれる水無月さんから教わったことですので決して『バッカ』ではないでしょう」
「じゃ、捕まえてみろよ今すぐに」
「そうしたいのですが、この手にアイスがあるうちはさすがに、、、」
「んなら帰るわ。これありがとな」
「あ、春蕾さん!」
木瀬の言葉半ばで春蕾は店を出ていってしまった。
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