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「さすがだね。
でも肝心なのは、俺の場合はどうやって人殺しを実行したか、ってことだよね」
「はい、先ずは狭い空間、換気の無い場所が必要です。
貴方はデリバリーされた仲間のうち一人を選び、スモークで演出をしようと浴室に誘導します。
ドライアイスを浴槽に沈めた後、客を呼んで来るなどと言って自分だけ一旦浴室を出る。
数分後、クークアのプラスチック袋に室内の空気を入れて口を握り浴室へ戻る。
安全な呼吸を確保しながら被害者の死亡を確認したら換気を再開し、ドアを開け放って後は知らん顔。
どうです?
まっ、たとえベッドの上だとしてもですよ?
クスリで全員の意識が飛んでれば、ドライアイスを入れたプラスチックバッグを頭に被せ、殺めることなど簡単なのではあります。
、、、ただ、」
「ただ?」
「安易であるのに痕跡の隠し方はあまりにも浅慮で雑。
貴方は自分が犯人だと特定されることをちっとも恐れていなかった」
「そうかな?
被害者装って捜査の目を逸らすとか、いろいろ努力はしてみたんだけど?」
「殺人未遂事件ですね?
あれは単に水無月さんの気を引く行為だったのではないでしょうか。
虚偽の事件を起こして好きな相手を呼びつける。
案外、貴方は愛着障害による後天的性格問題をお持ちなのかも知れませんよ」
「それって親子関係が原因のやつだよね?
あ、でも確か小学生ん時『感情の伝達手段に問題抱えてる』ってスクールカウンセラーと心理士に言われたことあるわ」
「ふむふむ、やはりそうでしたか。
では殺害対象が男娼ばかりだった理由、その動機についてはどうでしょうか。
加害者が既に死亡し、その遺族が花園街の男娼とだけ知り得たとしたならば、貴方は母親の仇を取る為男娼全員に的を絞り、復讐した可能性もあります。
しかしそれでは対象人数が多過ぎます。
そこで僕としては、、、」
言いかけたところで部屋の入り口から水無月が顔を出した。
「長ぇぞ。
いつまで営業妨害してんだ、さっさと連れ出してこい」
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