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「わかりました。えーと、それじゃあ松永さん……」
「あ、それとね刑事さん。その『松永さん』って言い方止めてほしいんだ。なんか他人ギョーギだし、名前で呼んで?」
「……わ、わかった。じゃあえーと……唯佳ちゃん、昨日学校で何をしてたか聞かせてくれるかな?」木場がたじろぎながらも尋ねた。
「オッケー! えーとね、昨日は沙絢と一緒に10時から補習を受けたの。補習は2コマあって、終わってから沙絢と一緒にお昼を食べたんだ。で、その後13時くらいだったかな? 沙絢がセンセーの面談受けに行って、ユイはその間適当にぶらぶらしてたの。唯佳も14時から面談だったから、終わったら一緒に帰ろうって沙絢と約束してて」
「じゃあ、面談までは児島さんと一緒にいたってことだね。その後はどうしたの?」
「ユイ、面談が終わってから1組の教室に行ったんだ。沙絢とそこで待ち合わせしてたから。でも沙絢全然来なくて、LINEで連絡しても既読つかないし、おかしいなーって思いながら待ってたんだけど、結局来なかったから先に帰っちゃったんだ」
「それは何時くらいのこと?」
「うーんとね、面談が終わったのが15時ぐらいだったでしょ。で、待ってたのが1時間くらいだから……16時くらい?」
「ふうん……。児島さん、どうして待ち合わせ場所に来なかったんだろうね」
「ユイもわかんない。待ち合わせしようって言い出したの沙絢なのに」
唯佳が不満げに頬を膨らませた。ひょっとしたら、沙絢はその時すでに命を落としていたのだろうか。
「それで、16時頃に唯佳ちゃんは学校を出て、その後どうしたの?」
「うん、そっからは家に帰って、もっかい沙絢に連絡したんだ。でも全然繋がんなくて。ちょっと心配だったけど、どっかに携帯置き忘れたのかなって思って、あんまり気にしてなかったんだ。今日も補習だし、その時会えるからいいかなって」
「今日は何時ぐらいに登校したの?」
「10時ちょっと前くらいかな?ユイ、朝弱いからいっつもギリギリなんだよ。でも来たらパトカーいっぱい停まってて、近くのセンセーに何があったのって聞いても何にも知らないみたいで。だから今度はお巡りさんに聞いたんだ。そしたらいろいろ質問されて。で、昨日沙絢と一緒に補習受けてたこととか、連絡取れなくなってること話したらびっくりされて、そのまま進路指導室に連れてかれたんだ」
「じゃあその、児島さんが亡くなったってことは……?」
「……うん。進路指導室で待ってる時に、担任のセンセーが話してくれた。ユイ、正直全然実感ないんだけど……」
そこで初めて唯佳の顔にかすかに翳りが差した。親友を亡くした直後にしては妙に明るい言動は、現実を受け入れられていないことの表れなのかもしれない。
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