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「えーと……1コマ目の途中で教室を移ったんだよね。だいたい何時頃のことかな?」
「うーん、10時半くらいかなぁ?ホントはずっと1組で補習受けるはずだったんだけど、結局2コマ目も2組で受けたんだ。午後からはわかんないけどね」
「児島さんが水筒を忘れたのに気づいたのはいつ?」
「たぶんお昼の時かなぁ? ユイと沙絢、お昼はいっつも中庭で食べるんだよ。
で、食べようとしたら沙絢が水筒ないってことに気づいて。でも取りに行くの面倒だからって自販機でお茶買ってたよ」
「その後は?」
「その後はねぇ、沙絢はそのまま面談行っちゃったから、結局取りに行ってないと思うよ」
「つまり……少なくとも10時半頃から13時までは、水筒は1組にあったってことですよね」木場がガマ警部に確認した。
「そうなるな。1組の掃除が終わった時間はわかるか?」ガマ警部が唯佳に尋ねた。
「わかんない。2コマ目が終わった時には誰もいなかったけど」
「つまり、10時半から12時までの間は無人だったということだな。その間、教室に鍵はかかっていなかったのか?」
「たぶん。ユイが面談終わって行ったら鍵空いてたし」
「えっと……話を整理すると、掃除が終わってから12時までは誰でも1組に入れた。つまり、毒を入れるチャンスがあったということですよね?」
「そうなるな。あと問題になるのは午後だ。あの古賀という生徒によれば、補習は午後からも行われていた。午後の補習も2組で行われていたのなら、毒を混入するタイミングはさらに広がることになる」
「午後から補習を受けていた人に話を聞かないといけませんね。古賀さんをもう一度呼びましょうか?」
「あのぉ……刑事さん?」
木場とガマ警部の間できょろきょろと視線を動かしていた唯佳が、そこでやおら口を開いた。
「何だ、どうした?」ガマ警部が振り返った。
「午後からのことだったら、貴弘も知ってると思うよ? 確か午後イチで補習受けたって言ってたし」
「貴弘君?」木場が首を傾げた。
「うん、的場貴弘って言って、沙絢のカレシなんだ。背高くてイケメンなんだよ!」唯佳が嬉しそうに両手を合わせた。
「あぁ……進路指導室にいたもう1人のことですね」
「ふん、それは好都合だ。さっそく呼んできてくれ。あんたはそのまま待機しておいて構わん」
「はーい!」
唯佳は元気よく手を上げると、小走りで教室を出て行った。
「……なんか、すごい無邪気な子ですね。高校3年生にしては幼いというか」木場が唯佳の背中を見ながら呟いた。
「まったくだ。さっきの委員長は随分堅苦しかったが、今度は小学生を相手にしている気分だった。この学校にまともな奴はおらんのか?」ガマ警部が呆れ顔で息をついた。
「被害者の彼氏はどんな子なんでしょうね。的場君でしたっけ」
「さぁな。もう少し普通に話が出来る奴だといいが」
ガマ警部が鼻を鳴らした。あまり期待しているわけではなさそうだ。
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