日常に忍び寄る影

1/5
前へ
/114ページ
次へ

日常に忍び寄る影

 7月31日、10時過ぎ。平日の昼間、普段は人通りの少ない道路を、何台ものパトカーがサイレンを鳴らしながら走り抜けていく。犬の散歩をしている主婦や、公園へ向かう途中の老人が足を止め、何事かという顔をして過ぎ去っていくパトカーを見やる。 「何だ、事件か?」 「いやだねぇこんな真っ昼間から。まさか殺人事件じゃないだろうね」 「ちょっと止めてよ、刑事ドラマの見過ぎだって」 「あのパトカー、(なぎ)高校の方に向かったけど、まさかあそこで?」 「ちょっと怖いこと言わないでよ。うちの息子もあの高校に通ってるんだから……」  住民達が不安げな表情を浮かべながら次々と憶測を口にする。平穏だったはずの生活に突然事件の影が入り込み、誰もが混乱し、当惑を隠せずにいた。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加