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日常に忍び寄る影
7月31日、10時過ぎ。平日の昼間、普段は人通りの少ない道路を、何台ものパトカーがサイレンを鳴らしながら走り抜けていく。犬の散歩をしている主婦や、公園へ向かう途中の老人が足を止め、何事かという顔をして過ぎ去っていくパトカーを見やる。
「何だ、事件か?」
「いやだねぇこんな真っ昼間から。まさか殺人事件じゃないだろうね」
「ちょっと止めてよ、刑事ドラマの見過ぎだって」
「あのパトカー、薙高校の方に向かったけど、まさかあそこで?」
「ちょっと怖いこと言わないでよ。うちの息子もあの高校に通ってるんだから……」
住民達が不安げな表情を浮かべながら次々と憶測を口にする。平穏だったはずの生活に突然事件の影が入り込み、誰もが混乱し、当惑を隠せずにいた。
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