替えの利く関係

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替えの利く関係

 唯佳を進路指導室に戻して間もなく、1人の男子学生が教室に現れた。  身長は180センチ近くあるだろうか。シャツの裾をズボンから出し、第2ボタンの間からがっしりとした胸板が覗いている。ズボンのポケットに手を突っ込み、首を回す姿はどこか気だるげだ。前髪の短いツーブロックの髪形はさっぱりとしていて、いかにも女子高生が好みそうな雰囲気だ。こちらをまっすぐに見据える目つきは鋭く、相手の力量を推し量ろうとしているように思える。  木場の時代にもこんな高校生はいた。校則に引っかからない程度に制服を気崩し、髪形にも気を遣う。そんな絶妙なバランスが女子からの絶大な支持を受ける。その上高身長、シャープな顔立ちが加わればその人気は芸能人にも匹敵する。木場が貴弘から受けたのはそういう印象だった。自分とは無縁の世界にいる人間。  自分が卑屈になっているのに気づいて木場は咳払いをした。高校生を相手に張り合ってどうする。ここは大人として、冷静に事を進めなければ。そう思って落ち着いた口調で話を始める。
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