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「まぁ、生徒への聞き込みはこんなところでいいだろう。後は被害者の担任だな」
「確か、捜査に立ち会って化学実験室にいるんでしたね」
「あぁ、聞き込みのついでに、実験室や薬品棚も調べておいた方がいいだろうな」
「そうですね! ではさっそく行きましょう! えーと、化学実験室は……」
「南側の校舎の3階だそうだ」
「南側……ってことは反対側の校舎ですね。階段の上り下りしたら汗かきそうだなぁ」
木場がげんなりして窓の外を見やった。時刻は間もなく13時。今いる教室は窓が北側にあるため、それほど日差しは強くない。だが南側に移動するとなれば、さらなる暑さに襲われることになるだろう。
「木場、若いくせに泣き言を言うな。俺が若い頃にはクーラーすらなかったんだぞ」
「うぅ……だって今はガマさんの時代より暑いじゃないですか」
「心頭滅却すれば火もまた涼し、だ。さっさと行くぞ」
ガマ警部はずんずんと教室を出て行く。木場は今一度窓の外に視線をくれた。日陰のない校内は見るからに暑そうで、耳触りな蝉の鳴き声がいっそう木場を追い立ててくる。
木場は諦めてため息をつくと、肩を落としてすごすごと教室を後にした。
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