日常に忍び寄る影

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 夏休みに入り、昨日までは閑散としていた校内を、今日は警官達が慌ただしく駆け回っている。事情を知らずに登校してきた生徒達は、緊迫した空気の中で走り回る警官達を怯えた顔で見つめ、その場に居合わせた教師達に何があったのかと尋ねた。だが、教師にも詳しい事情は知らされていないのか、生徒達と同じように困惑した表情を浮かべ、要領を得ない説明を返しただけだった。  その時、正門の方から新たに2人の刑事が走ってくるのが見えた。教師と生徒達はつられてその2人の方を見やった。1人はずんぐりとした体格の中年の男。もう1人は小柄な若い男。共に半袖のワイシャツに身を包み、額に浮かんだ汗を手で拭いながら周囲を見回している。  教師が中年の刑事と目が合うと、彼はずんずんと教師達の方に近づいてきた。歩くだけで地鳴りがしそうな迫力がある。 「おい、ちょっと聞きたいんだが、3年1組はどこだ?」  中年の刑事が尋ねた。近くで見ると、仁王像のようにいかつい顔をしているのがわかる。 「あ、えーと……1組なら北側の校舎の2階にあります。あちらの校舎ですね」  若い男性教師がうろたえながら答え、刑事の背後にある校舎を指差した。刑事は振り返って頷くと、すぐに踵を返してその校舎の方に向かおうとした。
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