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「それで、渕川さん。今回はどんな事件なんですか?」
木場が口を挟んだ。木場とガマ警部が現場に行った際には、まず渕川から情報収集をすることが恒例になっていた。渕川も心得ているのか、ぴしっと敬礼をして説明を始めた。
「はっ! 殺害されたのは、3年1組の児島沙絢という女子生徒であります! 本日、3年生の教室では10時から補習が行われる予定だったのでありますが、9時ごろ、最初に登校した生徒が死体を発見したそうです」
「被害者の死因は?」ガマ警部が尋ねた。
「毒殺のようです。体内からシアン化カリウムの成分が検出されました」
「シアン化カリウム?」木場が口を挟んだ。
「俗にいう青酸カリですね。化学実験室で保管してあったものを使用したようです」
「青酸カリって……そんな猛毒が学校にあっていいんですか?」
「普段は化学実験室にある薬品棚に鍵をかけ、厳重に管理されていたようです。ただ……その鍵が3日前から紛失していたようで」
「え、それってつまり、誰でも青酸カリを持ち出せたってことですか?」
「そのようです。薬品棚の鍵は実験室の鍵とセットになっていて、化学教師が管理していました。紛失届は3日前に提出したとのことですが、事務員の夏休み等が重なって処理が遅れ、上まで報告が上がっていなかったようです」
「つまり、この3日間は誰でも自由に実験室に出入り出来たというわけか。まったく……この学校の管理体制はどうなっとるんだ?」
ガマ警部が忌々しそうに言った。その対応の杜撰さには木場も眉を顰めるしかない。
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