求婚作戦1

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求婚作戦1

 私がまず連絡をしたのは、以前あるドラマで共演した頃しつこく言い寄ってきていた年上の俳優の石作さん。私から連絡をした事はなかったから私の誘いにはすぐ飛びついてくるだろうと予想していたけれど、想像通りで草。  意気揚々とご飯に行く約束をする。  自慢の顔に映えるメイクをして、とびっきりのオシャレをして、予定の時間より少し遅れちゃったけれど、石作さんが予約してくれた芸能人御用達の完全個室の鉄板焼き屋さんの中へ入る。 「石作さん、お久しぶりです」 「やぁ。姫菜ちゃん。連絡ありがとう、嬉しいよ」  ――。  その後もお寿司屋さんや焼き肉屋さんなど、数回食事を一緒にした。共演していた頃の思い出話に花を咲かせたり、当時の共演者の話題で盛り上がったり。  え、これもう婚活成功じゃない?めちゃくちゃいい感じじゃない?そろそろ告白されちゃったりして。なんて世界一落ち着く自分の部屋で美顔器をかけながらパックをして浮かれている私に、ちょうど石作さんから電話が掛かってきた。何だろう?次のご飯の約束かなぁ?  意気揚々と通話をタップする。 「もしもし、石作さんどうされました?」 「姫菜ちゃん、今大丈夫?ごめんね、遅くに。こんな事電話で言うべきじゃないかもしれないんだけど、早めの方が良いかとも思って……」  よっしゃ。告白キタな、これ。勝ち確じゃん。 「何でしょう?」  来い!来い! 「あのさ。言いにくいんだけど。もう二人でご飯行ったりするのはやめにしたい」  え――?! 「え、ごめんなさい。ワンモアプリーズ」 「もう二人でご飯行ったりするのはやめたいんだ」 「なんでですか?!」 「うん……。言い辛いんだけどね。姫菜ちゃん、僕とご飯行った数回の中でお会計の時に1度たりともお財布を出す素振りすら見せなかったよね。僕、そういう女の子はちょっと……ね……ごめん、そういう事だから。それじゃ」  プツッと切れた電話。  ま?  衝撃的過ぎる。  確かに石作さんとご飯に行っても、毎回おごってもらえると高を括ってお財布を出すなんて行為、微塵にも思いつかなかったわ。  もしかしなくても、私ってやばいのかな?  婚活するっていうのに、結婚するかもしれない相手と金銭感覚違ってたら嫌だよなぁ。うん、これからは割り勘も当たり前だと肝に銘じよう。  求婚作戦1 姫菜は金銭感覚を養った。
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