神殺しの鬼

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「貞夫……」 村長は貞夫のそばで屈みこみ、開いた目を指で閉じさせた。 目元には涙が溜まっている。 「ごめんな……貞夫」 「悪いな、村長……殺しちまった」 「いいんだ、お前が謝ることじゃない」 「いや、謝ることだよ。あんたも俺も覚悟はできてた。でも親のあんたに俺は謝らなくちゃいけない……そうだろ?」 「……ありがとうな、少年」 「いいってことよ」 俺も屈みこみ、貞夫の顔を目に焼き付けた。 最期まで忠義を尽くした立派な男だ。 「……人のまま死なせてやれた」 「どういうことだ?」 「美智子だよ……頭をいじられてた。リミッターを外されたんだ」 「確かに人間とは思えない身体能力だったな。あいつそんなことまで出来るのか」 「……美智子」 「あいつも本気なんだろ。今からそれを打ち砕きに行く……」 「ああ、終わらせに行こう」 「藤本さんも村長もありがとうな。あんたらがいなきゃ俺殺されてたよ」 「馬鹿やろう、こっちのセリフだ。いい男だぜお前」 「人殺しのブサイクだぞ俺は。見え透いた世辞は失礼なんだからなぁ」 「なんで嬉しそうなんだよ」 「ランナーズハイってのあるだろ?限界越えたら気持ちよくなるもんさ」 「気色悪いやつだな」 「ひどっ」 「ねえ、もう出てきていい?」 物陰に隠れていた花田がひょこっと顔を出した。 「おお花田!こっち来いよ!」 俺は手招きした。 花田はトコトコとこちらに向かってくる。 「この子誰だ?」 「ああ、花田だよ。俺の友達」 「は、初めまして」 「おう」 「しかしあんた、なんでここにいるんだ?それに俺を助けてくれたろ?」 「まあね、本当は全部終わるまで待ってようと思ったんだけどなんか祭祀場が火事になったでしょ?だから行ってみたの。そうしたら毒島くんがやったって言うじゃない。だからローブさんに詳しい話を聞いてここに来たってわけ」 「それは分かるけどよ、なんで助けてくれた?」 「まぁ……君が痛めつけられてる姿見たら助けないわけにはいかないよ……友達でしょ?僕たち」 花田は照れくさそうに笑った。 俺の体が震えだす。 そして遂に大声で笑ってしまった。 「あはははは!!友達思いだなお前ぇ」 「でしょ?もっと感謝していいんだよ?」 「もちろんだ、俺は恩は忘れねぇよ」 俺は花田の頬や額にキスをしまくった。 花田は顔を真っ赤にして俺を突き放す。 「ちょっと!何するの!」 「感謝の気持ちさ、俺すごく嬉しいんだよ!」 「もう……冗談だよ。大して役に立ってないでしょ僕」 「役に立つ立たないじゃない。俺を助けようとしてくれたことが嬉しいんだ」 「知ってるでしょ?僕が優しくされたら嬉しくなっちゃうこと……」 「おっ?愛の告白か?」 藤本さんが茶化しながら言った。 「構わねぇぜ俺は。夢花と3人で暮らすか?」 「夢花さんはいるんだね」 苦笑いをする花田の肩を叩く。 そして儀式の間がある方向をしっかりと見据えた。 「さあ行くぜ……巫女をぶちのめしに」 俺たちは巫女と夢花が待つ場所へ歩き出した。
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