神殺しの鬼

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「美智子ぉぉぉ!!!!」 俺は腹の底から巫女の名前を呼んだ。 小汚い鳥居の後ろで炎が赤赤と燃え上がっている。 雪が降り、風が強いこの寒空の下で炎は燃えている。 野ざらしなのに、消える気配はない。 その大きな炎のそばに巫女はいた。 そして夢花も……。 彼女は2人の黒ローブに肩を掴まれている。 「政宗くん……元気そうですね」 「まあな!」 「兄さんは……死んだのですか?」 「ああ、殺したよ。そしてお前も殺す」 「マサくん……嘘……生きてたんだね!」 夢花は涙をポロポロと流しながら俺の生還を喜んでくれた。 俺は片手をあげて、笑ってみせる。 「今助けてやるからな!待ってろ!」 「うん……うん!」 「……本当に逞しくなりましたね、政宗くん」 巫女は夢花を抱き寄せた。 彼女は手を後ろで縛られているらしく、抵抗は出来ないようだ。 「撃てますか?私を」 「残念だぜ巫女様、あんたそんな小物臭いことしないと思ってたんだがな」 「買いかぶりすぎですよ、私は出来ることをやるだけです」 「殺せねぇだろあんたには。ここまでやったこと全部無駄にする気か?」 「ええ、本当に残念です。ですが生きていればまた夢を叶えられる……そうでしょう?政宗くん」 「やっぱり残念だよ、あんたも命が惜しいのか?」 「どうでしょう……ですが死んでしまってはどうしようもない。もう1度挑戦する機会もなくなります。でしょう?政宗くん」 「そうだな、なかなか前向きな女じゃないかあんた」 巫女はクスリと笑った。 俺は手に持った拳銃をじっと見つめる。 「美智子……もうやめてくれ。神などいないのだ、お前も分かっているはずだよ」 「……ごめんね、お父さん……神様はいるよ、私が世界を変えるんだ。私も兄さんもお父さんも……ずっと辛い思いをしてきた。それにみんなもだよ。みんな怯えてるだけなんだ。怖くて怖くてたまらない……だから人に意地悪しちゃうの。そんなの悲しいじゃない?私は嫌だな……」 「美智子……」 「なあ巫女様」 「なんですか?」 「あー……別に。呼んでみただけだ」 「ふふ、そうですか」 「あんた、俺たちを殺すんだろ?」 「はい、殺します」 「聞くまでもなかったな」 俺は拳銃を巫女に向けた。 銃口は巫女が盾にしている夢花を捉えている。 「……マサくん、撃って。私は大丈夫だから」 「馬鹿言うなよ、何のためにここまで来たと思ってるんだ?絶対に助けるって言っただろ?」 「ありがとう……私すごく幸せだよ」 「男冥利に尽きる言葉だぜ」 俺は藤本さんに拳銃を渡した。 「なんだよ……俺に撃てっていうのか?流石にこの距離で巫女だけを狙うってのは……」 「撃つのは俺が死んでからだ」 俺は数歩前に出た。
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