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「ぎゃあああ!!」
黒ローブの2人は神子の素質がない。
全身が黒い炎に包まれている。
夢花は平気なようだが、危険なのは変わりない。
俺は彼女を立たせて、ここから離れよう。
「うごがぉぉぉぉあ!!」
「なんだぁ?」
俺は夢花を抱いたままバックステップする。
声……というより叫び声だ。
その発生源は炎の中からだ。
「がぎぃぃぃぃい!!!」
もはや人の声ではない。
美智子の遺体が起き上がった。
暗黒の炎から足を出し、ゆっくりと俺たちに近づいてくる。
衣服は全て焼け、全裸となったやつの肌は真っ黒で、全身に炎を纏わせている。
「巫女……様?」
「あいつは美智子じゃねぇ、下がってて」
俺は構えてやつに近づいた。
もう人間の顔じゃない。
眼球は赤く染まり、口や鼻の穴からどろどろとした液体が漏れ出ている。
ファイナルラウンドだ。
「が……が……ぐ」
やつは頭を抱えて体を振っている。
そしていきなり俺に襲い掛かってきた。
冷静にジャブで動きを止めて、肝臓を叩く。
フックで首を大きく捻らせて、腹を蹴って後ろに押し戻した。
「ぐ……か……が」
左アッパーを打ち上げて、怯んだやつの顔にストレートを叩きこんだ。
やつは無垢の炎に飛びこむ。
苦しそうに炎の中で悶えている。
短剣で呼び出された神は、器ではない女に乗り移った。
あの体では不完全なのだろう。
しかし……哀れなやつだ。
あいつも俺たちもこいつも……。
終止符を打ってやらないと可哀そうだ。
やつは苦しみのあまり炎から脱出しようとしている。
俺は回り込んで、やつの顔を殴り倒した。
また炎に押し戻されたやつは、徐々にその体を崩壊させていく。
溶けていくというより、ボロボロと崩れていく感じだ。
痛いのだろうか?熱いのだろうか?
やつは生きようと必死に炎から這い出ようとしている。
俺は炎の中に手を突っ込んでやつを殴った。
何度も何度も。
やつの足が灰になる。
腕も胴も崩壊していく。
そして頭も、消えてしまった。
「じゃあな……」
「マサくん……大丈夫?」
「ああ、平気さ」
「……神様だったの?」
「たぶんな」
「本当にいたんだ」
「そうみたいだな」
「よかったのかな、これで」
「ん?」
「いや……ごめん」
「ふふ、いいんだよ。君は優しいな」
「助けてもらったのに、変なこと言っちゃった」
「気にしないで、助けたのは俺の勝手だ。自分の考えを大切にしていい」
夢花は俺の片腕を抱きしめて寄りかかってきた。
俺も彼女の肩を抱く。
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