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「そういえば」と思って、俺はジャケットのポケットに手を突っ込んでみた。
何も入れていないはずのポケットの中には紙のような物が入っている。
新手の宗教勧誘かと疑って俺はくしゃくしゃになった紙を開いてみた。
紙には鉛筆で文字が書かれている。
「たすけて」とひと言だけ……。
「……あ?」
助けて。
どういう意味だ?
あの少女は俺に助けを求めたのか?
だがなんで俺に?何から助けてほしいんだ?
これも勧誘のための作戦か?
様々な疑問が頭の中を這いまわる。
考えてみても納得できる答えが得られない。
印象ではあの少女は白ローブたちを従えているように思えた。
なのに「助けて」……。
まさかやつらに何かを強要されているのか?
何も分からない。
それに面倒なことには首を突っ込まないのが1番だ。
俺は決断した。
少女から貰った紙をまたくしゃくしゃにして近くにあったゴミ箱に捨てる。
これでいいのだ、俺なんかが役に立つわけないし何よりそんな義理もない。
俺は数歩歩く、歩くたびに彼女の顔がちらついてしまう。
あの顔には見覚えがあった。
顔というより表情だ。
あの全てを諦めた覇気のない顔……。
俺はため息をついて、踵を返した。
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