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「おい、あんたら」
俺は空港の外に出て、駐車場に訪れていた。
白ローブの姿は見えない、だが少女と黒ローブの人間を見つけたのだ。
黒ローブの顔はみな険しく、声をかけた俺を睨みつける。
「その子を離せ」
俺はゆっくりと彼らに近づく。
黒ローブは少女を後ろに下がらせた。
俺はあたりを見回してみる。
近くには車に乗っている人や歩いている人、さらに運よく警備員もいた。
何かあっても誰かが助けてくれるだろう。
「その子を離せって言ってんだ、聞こえないのか?」
「……君は誰だ?」
「関係ねぇだろ。その子を離せ」
「君にも関係のないことだ」
「だな、でもその子嫌がってる。だから離せ」
黒ローブの数は7人だ。
乱闘になったらちと分が悪い。
だが俺に恐れはなかった。
歩みを止めずに俺はやつらのすぐそばまで到達する。
「……なぜ?」
「あ?」
「なぜ……」
黒ローブの1人が独り言を何度も呟く。
「なぜ」と何度も。
「ボケてんのかあんた」
「おい……この青年は」
「ああ……巫女様に報告した方がいいな」
「しかし……いいのか?」
「それを判断してもらう、違うなら違うでそのときだ」
黒ローブたちはひそひそと話し合っている。
俺は煮え切らなくなり、強引に男たちの中に割って入り少女の手を取った。
ローブたちは動揺して、急いで俺たちの繋がりを解こうとする。
「やめろ!神子様に触るんじゃない!」
「神子?ああ……そういう宗教なのか?」
俺は黒ローブたちの手を振りほどき少女を抱き寄せた。
そしてローブの1人の腹を蹴り、この場から離脱しようとする。
彼女を支えながら駆ける、このまま逃げようと思った。
だが黒い影に行く手を遮られる。
彼らとは違い真っ赤なローブを着用した人間……。
俺は顔をあげた、2メートルを越す巨漢が俺たちの前に立ちふさがっている。
顔のほとんどは赤いヴェールで隠されており、目元しか伺えない。
「……なんだこいつ」
「早く逃げよう!!」
初めて少女が話した。
必死さが溢れていて、少し上ずっている声だ。
「早く!早く逃げなきゃ!」
「大丈夫だ、近くには人もいる。騒ぎになれば警察だって……」
「違うの!それじゃダメなの!」
「なに?」
瞬間、俺の頬が弾けた。
骨が軋み、横方向に吹っ飛んでいく。
地面に体をぶつけて痛みが走る。
薄まる意識になんとか抵抗した俺はふらつきながら立ち上がった。
「野郎……」
俺は巨漢を睨みつけた。
顔面を殴られて黙っているわけにはいかない。
巨漢は少女を黒ローブに渡して、悠然と俺を見下ろしている。
「覡様、大丈夫ですか?」
覡と呼ばれた巨漢は俺を指さし、荒い息を吐いた。
ローブの男はコクリと頷く。
「分かりました、あの青年も連れて行きます」
俺は切れた唇の血を拭った。
連れて行くとはどういうことだ?
俺も拉致する気なのかあいつらは。
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