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「(ようやく帰ってきた……!)」
時が経っても変わらない故郷の村の佇まいに、ルシオは全身の力が抜けるくらいほっとした。
これまで過ごした地獄の日々を思えば、あまりにも平和な光景だ。
高い塀も門もなく、近くまで来れば村中を見渡せる見通しの良さ。村と外界との境界はあまりにも曖昧で、簡素な立て札だけが、村の入り口であることを主張している。
この村の周囲には、何故か昔から危険な生き物も魔物も出ない。
馬車で一日ほど行けばにぎわった城下町があるというのに、街道から少し外れているせいか、はたまた大して豊かでもないせいか、戦禍に巻き込まれたこともなく、常にのんびりとした時間が流れている。
外の世界を知った今となってはそれを不思議に思うが、ここに住んでいた当時の自分にとっては普通のことだった。
足を踏み入れると、村の人々も、変わっていないようで安心した。
旅人以外は顔見知りばかりで、突然いなくなり突然帰ってきたルシオを皆驚いたような顔で見ているが、まずは目的を果たしたいと、軽く会釈をするだけで先を急いだ。
生まれ育ったこの村から離れて、丸三年が経っている。
セアはまだここにいるだろうか。
もしもこの村を離れてしまっていたら、その時は探しに行くだけのことだが。
あの時、果たせなかった告白をするためだけに、この三年間を耐え抜いたのだから。
何度も通った道は忘れもしない、姉と二人で暮らすセアの家の方に向かって歩いて行くと、不意に曲がり角から出てきた人影は、今まさに会いに行こうとしているセアその人だった。
記憶にあるものよりも大人びた面差しに、思わず視線が釘付けになる。
そして……、
セアと手を繋ぎ、隣をよちよちと歩いている小さな子供にも。
その顔には、紛れもない、セアの面影が…。
「(ああ……、そうか」
三年。
その年月は、決して短くはない。
セアは、自分などいなくても幸せになったのだと、ただ立ち尽くした、その時。
こちらに気付いたセアが、信じられないものを見たように、目を見開いた。
結婚していても、友人であることには変わりはないはずだ。
久しぶり。
片手を上げ、できる限り自然に振る舞おうとしたルシオとは真逆に、セアはギギギ……と音のしそうなぎこちない動作で、近場の露店の主人におもむろに子供を押し付けたかと思うと。
……回れ右をして、脱兎の如く逃げ出した。
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