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「……え?」  何故そんな、モンスターに遭遇したかのような勢いで逃げて行くのだろう。  一瞬呆気にとられたが、その背中を反射的に追いかけていた。  ルシオとセアは、幼馴染だ。  ルシオには両親がなく、村の人達に育てられた。  中でもよく面倒を見てくれたのがセアの一家で、特にセアの姉には、セアと一緒によく遊んでもらった。  幼い頃、あまり感情表現の得意ではなかったルシオが村の子供たちに受け入れられていたのは、その二人のお陰だったと言っても過言ではないだろう。  セアとは気が合って、一緒にいると楽しかった。  早くに片親を亡くしているせいか、たまに寂しそうな顔をするセアを、幸せにしたいと思った。  やがて大人になり、一人で生きて行けるようになったルシオは、セアに告白をすることにした。  ずっと一緒にいて欲しい、と。  プロポーズをするつもりで、大事な話があるのでいつもの場所で待っていて欲しいと、セアを呼び出したのだが…緊張していたせいだろう。  道中、停めてあった商人の馬車の後ろを通り掛かった折り、前方不注意で側に積んであった荷に躓き、荷台の方に倒れこみ、打ち所が悪かったらしく意識を失い…、気付いた時には違う街にいたのだった。  何故、誰も荷改めをしなかったの……?  そんな物語みたいなこと……。  …と、しばし愕然としたものの、セアを呼び出しておいてすっぽかしてしまったことに思い至り、焦って戻ろうと思ったが、村の外へ出るのは初めてで、しかも近所に行くつもりだったので金も持っていない。  その時、城下町では祭りをやっていてすごい人だった。  こんなに人もいるのだし、村まで乗せてくれる馬車でもないかと、なんとなく人に流されて、気が付けば広場にでていた。  広場では、祭りのメインの催しなのか、立派な剣の刺さった岩が置いてあり、ルシオは、吸い寄せられるようにそこに歩いていって、  その剣を、抜いた。  どよめきで我に返る。  何か不味いことをしてしまったかと青くなっていると、兵士が突然やってきて、城に連行された。  見たこともないような豪華な部屋で待たされる間、生きた心地がしなかったが、やがて胡散臭い長髪糸目の男がやってきて、信じられない言葉を告げた。 「おめでとうございます。貴方は聖剣から勇者に選ばれました」
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