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穏やかな風が、さらさらと緑を撫でていく。
セアと二人、その優しい音を聞きながら、昔よくしたように、木の下に座り込んで話をした。
「それで、ルシオは三年間、どうしてたの?」
「いや…それがかくかくしかじか…」
かいつまんで事情を説明すると、徐々にセアの顔色が悪くなっていく。
「勇者……?魔王を倒して……?」
「もうほんと、なりゆきでさ。聖剣とか言ってたけど簡単に抜けちゃったし、改めて修行させられたわけだし、誰でもよかったんじゃないかって思うんだけど」
勇者になれる条件としては、体が丈夫、くらいではないだろうか。
「大変な怪我とか……しなかった?」
「無傷で…とはいかなかったけど、クレトゥス…宰相が高位の治癒魔法を使えたからすぐに治してもらえたよ」
その治癒魔法が何度も使われたのは、モンスターや魔王と戦っている時ではなく、鬼軍曹に課せられた鍛錬中の時が圧倒的に多かったというのは黙っておこう。
殺す気かと怒れば、蘇生魔法も使えるので大丈夫ですと、笑顔を返されて黙るしかなかった。
あの男こそ、魔王そのものなのではと今は思う。
ルシオの言葉に素直に納得したセアは、少し拗ねたような表情になった。
「うー…大変だったのはわかったけど、でも、手紙くらい送れたでしょ…!」
「…その発想はなかった」
そんな暇というか心の余裕がなかったのだろう。
あと、好きな人がいるなんてあの鬼軍曹に知られたら、人質にされるかもしれないという警戒もあった。
ただそれは、ルシオの気持ちであって、セアとの約束をすっぽかし、三年も待たせてしまった言い訳にはならない。
ルシオは、悲しい想いをさせてしまっていたことを、改めて謝った。
「ルシオは、これからどうするの?」
「お前がこの村にいたければいるし、セアが嫌じゃなきゃ一緒に旅に出るのもいいな」
「一緒に……」
嬉しそうな横顔に、うっかり邪な気持ちが浮かんできてしまう。
視線に気づいたセアは、ルシオの気持ちが分かったのだろうか、恥ずかしげにそっと目を伏せた。
長くなりつつある二人の影が重なる寸前。
「探しましたよ」
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