シュトーレンは、もうない

13/17
前へ
/17ページ
次へ
「頭を上げて。いいのよもう」 「奥様……」  そろそろ茶番を終わらせなければ。 「ごめんなさい。書いてしまうわ」  この離婚届がどうなるのか私にも分からなかった。 「あら、何でしょう。人の声が」  小暮がドアの向こうを気にする素振りを見せた。 「まさか、主人があなたを探しに来たんじゃないわよね」 「ちょっとこちらで待っていて下さい」  小暮がそっとドアを開けて外へ出て行った。心臓がドキドキする。もしかして、私より先にストーカー女が夫を襲ったのかもしれない。 「あんな適当なプランが上手くいくわけない」  期待と不安で額に汗が滲んだ。  その時、またドアの外で緊迫した人達の声が聞こえた。ドアを開けると、夫の会社の人達が慌てた様に何処かへ電話をかけていた。 「ーーさんが、女性を刺したって本当か?」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加