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「頭を上げて。いいのよもう」
「奥様……」
そろそろ茶番を終わらせなければ。
「ごめんなさい。書いてしまうわ」
この離婚届がどうなるのか私にも分からなかった。
「あら、何でしょう。人の声が」
小暮がドアの向こうを気にする素振りを見せた。
「まさか、主人があなたを探しに来たんじゃないわよね」
「ちょっとこちらで待っていて下さい」
小暮がそっとドアを開けて外へ出て行った。心臓がドキドキする。もしかして、私より先にストーカー女が夫を襲ったのかもしれない。
「あんな適当なプランが上手くいくわけない」
期待と不安で額に汗が滲んだ。
その時、またドアの外で緊迫した人達の声が聞こえた。ドアを開けると、夫の会社の人達が慌てた様に何処かへ電話をかけていた。
「ーーさんが、女性を刺したって本当か?」
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