シュトーレンは、もうない

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「……ありがとうございます」  坂井は深く頭を下げた。 「ご主人を殺すのはクリスマスが終わった後にして欲しいんです」 「……どうして」 「ストーカー女の死亡推定時にご主人といたという証拠が欲しいんです。写真でも動画でもとにかく沢山」 「ストーカー女?」 「僕、もうすぐ結婚するんです。それなのに、ちょっと関係があった女が自分と付き合わないなら殺すと何度も自宅に来ては暴れて……もう殺すしかないと」  腕に切り傷がある坂井もまた、私と同様に目の中に仄暗い炎が見えた。 「アリバイってどんな計画なの」 「はい! それはですね」  坂井は嬉しそうに計画を話し出した。  週末、会社が主催するクリスマスコンサートイベントにストーカー女を同ホテルの一室に呼び出し殺害、その後死体をイベントの荷物に紛れさせ、イベント終了後に車で死体を捨てに行くというような杜撰なものだった。 「それ、本当に上手く行くと思ってる?」 「ええ、まあ」  坂井は自信なさげに頷いた。 「殺す事は出来るでしょうね。相手はあなたの事が好きなのだから」  私は面と向かって殺せない。 「こういうのはどうかしら」 「何か良い案がありますか」
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