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「都合良く使ってきたとは言えるけど」
毎年少しずつメンテナンスして風貌も一歳ずつ微細に年を取らせてきたが、今年は一気にプラス十五歳幅で老けさせた。
「でも、私はまだ生きて寄り添いたいの」
粉々に砕け散った女性ヒューマノイドの姿を目の当たりにしたのは、病院での精密検査の帰りだった。
結果はまだ出ていないが、何となく悪い方を告げられるだろうという予感はある。
「ディーノと釣り合いが取れる年になるまでは」
ヒューマノイドの耐用年数は平均して二十五年。
つまり、三十歳のディーノが五十五歳になるまでだ。
「これが私の最後の作品になるかもしれないけど」
ジーナは暫く私を見守っていたが、大きく頷いて確固たる声で答えた。
「分かった」
一瞬、二人の間に流れた沈黙を断つように居間に通じるドアの開く音がした。
五十半ばのロマンスグレーの顔はしているものの、長身の背筋はシャンとして三十歳どころか二十二、三歳の青年にも引けを取らない立ち姿をしたディーノは穏やかな笑顔で告げた。
「そろそろ夕飯が出来るよ」
(了)
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