叔父

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 幼い頃、帰省しては遊んでくれた叔父が僕は好きだった。大人になった今は、長男である兄が寺の跡を継ぎ、自由気ままな次男坊という立場が似ているので、さらに親近感を持つようになっていた。  僕の兄は、「寺の仕事は結構好きだ。喜んで跡を継ぐのだから、お前は気にせず好きな道を歩め」と言ってくれる。その言葉に感謝しているが、同時に申し訳ない気持ちが捨てきれない。そういう気持ちにどう折り合いをつけたらいいのか、同じ立場の叔父に尋ねてみたい気持ちもあった。  案の定、数日後、叔父から電話があった。とりあえず会おうということになり、翌日の夕方、僕の下宿がある駅まで来てくれた。  駅の改札で再会した叔父は、最後に会った15年前とあまり感じが変わっていなかった。僕の父が今年50だから、叔父ももう40代半ばになっているはずだ。しかし、目の前の叔父は若々しく30代前半、場合によっては20代後半でも通用する感じだ。  その日は、近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら、互いの近況を話すので終わったが、次は叔父の中目黒(なかめぐろ)のマンションで飲もうという約束ができた。  叔父は経営者の信頼を得て貿易の仕事を任されているらしく、身なりもきちんとしていて金に困っている様子はなかった。なぜ、父が叔父と会うなと言ったのかが謎だった。
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