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「霊視で分かったことを整理してみよう。上質なスーツを着た20-30代の男性。カナティという偽名を使って、女子高生をマッチングアプリであさっている。誘い込む先は、ホテルではなく、おそらく自宅。そこで犯行に及び、死体をバラバラにして外に遺棄する」
「身元に結びつくヒントはありそう?」
「これっていうのは見つからない」
むこうだって、簡単に身元が割れるようなへまはしないだろう。
にこやかな表情。巧みな話術。上品な身なり。金持ち然とした物腰によって、女の子たちはいとも簡単に、素性を知らない男について行ってしまう。そのあやうさに慄然とする。
「アプリっていうのは、何?」
「スマホで使えるサービスのこと」
「どういうこと?」
「えーと……」
70年前の人に説明するって難しい。
「あれ? でも、アーバンイーツのアプリを使えたよね」
「よく分からないうちに出来た」
「へ、へえ……」
念じると操作できるのだろうか?
「そのアプリで会うことは出来ないの?」
「俺が? ……ああ、そうか。俺が囮になって、奴を引っ張り出せばいいんだ。どうせ騙し合いだ」
ヨシタカは、女子高生たちに人気がある出会い用アプリをスマホで検索した、評価の高い上位から5つほどダウンロードする。
「そいつに興味を持って貰うよう、写真とプロフを工夫して登録しよう」
可愛い子ぶった自撮りをアプリで加工して完璧な女の子に変えた。
プロフも目を引くようにウソを並べたてる。
――学内美少女コンテストチャンピオン。初めての登録です。優しい起業家のおじさまを求めています。
次々と同じ内容で登録した。
「こんなもんで来るかなあ」
半信半疑だったが、30分もしないうちに通知が鳴りやまなくなった。アイコンを見ると、千件もの申し込みが殺到していてビックリした。
「ウワワワ!」
思わずスマホの電源を切った。ここまで来ると恐怖が勝る。
「カナティはいた?」
「気持ち悪くて見られない」
レイの問いかけに、ヨシタカは浮かない返事をした。
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