プロローグ 出動

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「お疲れ様」  獅乃が椅子に座ると、滝坂が声をかけてきた。  獅乃は溜息を吐いた。 「相変わらずだな」  そこへ苦笑しながら、二人の上司がやってきた。  彼の名前は、()(がわ)(しん)()。少し白髪が混じった七三分けの髪型で、額と目元にしわがある。笑みを浮かべているため、目元のしわがさらに深くなっている。紺の四角い眼鏡をかけていて、細い目を大きく見せている。  低めの鼻と少し乾いた唇で、細長い輪郭をしている。  怒鳴ったことがないため、温厚な人物だという印象を持つ者が多い。  見た目は四十代の半ばくらい。  だが、厳しい一面を見せるのは、獅乃と滝坂だけだ。加えて、二人の好きにさせて問題が生じた場合は、責任を取ることも覚悟している。階級は警部で、警視庁刑事部捜査一課殺人犯六係の係長を務めている。 「できることをしただけです」  獅乃がぶっきらぼうに言った。  周囲から軽蔑されても、嘲笑のネタにされても、一切獅乃は気にしてない。  ノンキャリアで、階級は警部補。警視庁刑事部捜査一課殺人犯六係主任。歳は二十八。 「本当に、傍観者よねぇ。しかも変わり者とくれば、関わりたくないのは普通のことなのかもね」 「そう言うお前も、変わり者だと思うが?」  獅乃はじろりと滝坂を睨んだ。 「獅乃、まさか、あの事件のこと……?」 「それとは関係ありません」  獅乃は吐き捨てて、低い声で失礼しますと告げて、鞄をつかんで出ていった。
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