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「トキさん、すぐ作りますからちょっと待ってて下さい」
部屋の中は、選んでいたらしい服が床に散らかっている以外は、驚くほどすっきりと片付いていた。
でも一方で、ワンルームの部屋には若い女の子特有の甘ったるい匂いが満ち満ちていて、理性を失いそうになるのを感じた。
「いや、ほんと気を遣わないでほしい。それにここには話をしに来ただけだから」
「そんなかたいこと言わないでください。せっかく来てもらったんですもの、ごちそうしなくちゃ」
「いや、そんな時間はないよ。もう帰らなくちゃいけない」
「分かりました。でもお腹すいちゃったから、サラダとコーンスープだけ作ります。それでいいですか?」
ようやく諦めたような様子に胸をなでおろす。
「うん。ありがとう。いただくよ」
コーンがたっぷりと入ったコーンスープと僕の前にはナポリタンが置かれ、頼子ちゃんはサラダを前に向い合わせに座った。
「トキさんお腹すいてると思って。チンしただけで申し訳ないですけど、よかったらどうぞ。でも次はご馳走させてください」
「ありがとう。ありがたくいただくよ。このコーンスープ、コーンが一杯だね。こんなのがあるんだ?」
「これはコーン缶を入れてます。ただのコーンスープって、コーンが少なくてさみしいでしょ?だから」
「確かに。コーンが多くいと贅沢に感じるね。美味しいよ」
「でしょ?」
この子はほんとにデートがしたかっただけなのかもしれない。
思わせぶりな言葉に惑わされて、僕が考えすぎてたようだ。
たかだかスキー場で助けただけで、こんなおじさんに体を許すわけがないと思い直した。
頼子ちゃんを刺激しないよう、頼子ちゃんの話しに頷きながら他愛もない話しをしているうち、体の一部分に違和感を感じだした。
ー ま、まさか ー
「悪いけど、僕はもう帰るよ。ごちそうさま。ありがとう」
「待ってください」
慌てて立ち上がった僕の手を頼子ちゃんが掴んでいた...。
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