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「でも聞いて欲しいんだ。...ほんとのことを言うと僕は頼子ちゃんのことが好きだ。とても...好きだ」
頼子ちゃんの肩がピクリと動く。
「いや。こんなに可愛くて素直な子を好きにならない男なんていないと思う。今まで付き合った人もきっと頼子ちゃんのことを愛してたと思う。こんな魅力的な女の子なんだから。でも人は必ず嘘をつく。頼子ちゃんだって嘘はつくはだろ。嘘をついたら信じられないなら、たぶん一生愛されてると感じることはできないと思う。だから...。大切なのは”信じれるかどうか”じゃない。”信じるかどうか”なんだよ。それに心を通わせて、体を合わせても、でもずっと縛り付けておくことはできないんだ」
「でも私のこと、好きなら...。それなら...私と」
「ぼくはすぐおじいさんになる」
「...」
「僕はもう長い間、妻とは”した”ことないんだ。そしてこれからもない。」
「え?そうなんですか。それで...、奥さんはいいんですか?」
「頼子ちゃんもいずれ分かるよ。確かに若い頃は信じられないかもしれない。いわゆるレス状態?そうなりたくないって思うと思う。でも夫婦になるってことはそれを受け入れることだよ。すごく好きでなくてもいい。体の触れ合いがなくてもいい。喧嘩もする。でもお互いが、それが生活という意味でも、それなりに大切ならば続けていける。いや、続いていくもんなんだ」
「...」
頼子ちゃんはもう泣き止んで、考えるように真剣な顔をしていた。
「僕はこれからも頼子ちゃんのことを想って生きていくよ。それが気持ち悪いと思われようとも。大切な人だから」
「...わたし。...そんな風に言われたの初めてです。わたし、怖かったんだと思います。いつかこの人も裏切るんじゃないかっていつも思ってて。だから少しでも疑うと、いつも私から別れを切り出して傷つかないようにして。もしかしたら自分自身も信じれていなかったのかも...」
「人はいろんな失敗を繰り返して成長していくものなんんだ。僕もまだまだ人生の勉強中だよ。」
「ありがとうございます。わたし...。やっぱり私はトキさんのことが大好きです。トキさんのこと好きになってよかった。だからこれからはトキさんみたいな人を探します。トキさんみたいで、もっと若い人を」
「え~、そう言われるとなんだか悔しいな~」
「ふふ。その時は真っ先にトキさんに紹介します。それでトキさんを悔しがらせるんだぁ」
「ほんとだ。きっと悔しがるよ。もっと綺麗になった頼子ちゃんを見て。あの時やっぱり俺が~って。でも...。きっといるよ。僕が認めるほど頼子ちゃんにふさわしい人が」
「ありがとうございます。トキさんのおかげで、少し変われる気がします」
堰を切ったように涙を溢れさせた頼子ちゃんを僕はぎゅっと抱きしめた。
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