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「え~。だめだ」
本音を言うと抱きしめたい。でもここは我慢だ、俺。
「だって...。これが最後なんですから...。お願いです」
「う~ん...。ほんとに最後だよ」
意思が弱いぞ、俺。
「やったぁ」
両手を広げ嬉しそうに抱きついてきた頼子ちゃんから香るせっけんと甘い匂いにたちまち硬くなる。
「あ~、トキさんたら硬くなってる」
「仕方ないだろ、頼子ちゃんがいい匂いなんだから。それにまた誘惑してる」
「誘惑なんてしてませ~ん。勝手にトキさんが興奮してるだけだも~ん」
「え~。俺のせい~?」
「そうですよぉ」
そう言いながらも匂いを擦りつけるように頭を寄せられ、腰をひく。
頼子ちゃんはそれに気づいたように顔をあげ、潤んだ瞳を向ける。
「ねえ...。キスしてください」
「ちょ、ちょ、ちょ。それはだめだよ」
「だって、最後だし」
「それはだめだって」
「え~...。したいな~...。トキさんと最後のキス」
拗ねるように小さくつぶやかれ、僕の心はグラグラと崩壊寸前だ。
「だめ?」
この子は、ほんとに知ってる。男の弱いところを。
この誘惑に勝てる男なんて絶対この世にいないっ!
と、思いたい。
「最後だからね」
「やった。...ん~」
ちゅ。
「え?これだけ?」
「これもキスだろ」
「え~。思ってたのと違う~」
「でもキスはキスだから。これで~、おしまいっ。ね」
頭を撫でてなだめる。
「え~。おわり~?」
「そう。おわり」
「おわり...。ですか?」
「うん。おわり」
「やだな~。こんな終わり方。欲求不満になって、変な人としちゃうかも」
「頼子ちゃん、自分の体は大切にしなきゃ」
「え~。だったらトキさんに大切にして欲しいな~。トキさん私のこと大切だって言ってたし」
「言ってたけど、それとこれとは別だよ。ほら、これ以上はまた離れがたくなるから。そろそ..」
「いやですっ!キスしてもらえるまで離しません」
「頼子ちゃんっ!」
「いやです。いやです」
「...ほんとにこれで最後だからね」
「いいんですか?やったー」
「ふ~。泣いた子と頼子ちゃんには勝てないよ」
「んー」
舌を絡めるとたちまち甘い蜜となり、頼子から吐息がもれる。
僕はこの子から抜け出せるのだろうか。
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