124人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなある日、授業が終わり図書館に寄るためキャンバスを歩いていると、大勢の学生で賑わっている中央芝生に桃子の姿を見つけ驚いて駆け寄った。
「桃子!」
「あ、頼子久しぶり」
「久しぶりじゃないわよ。大丈夫なの?」
「うん。大丈夫」
「ほんと?よかった。...桃子」
「なに?」
「ごめんなさい」
「うん」
「この間はひどいこと言ってしまって」
「ううん。いいの」
「え?許してくれるの?」
「うん」
桃子の「うん」という返事に安心すると同時に、言い様のない違和感を感じた。
この間まで泣くことしか知らない少女のようだった桃子の、不気味なほどの落ち着き。
そして意味もなく微笑んでいるようなその顔に。
「どうしたの?」
「なにが?」
「だって桃子、この間まで...」
なんなの、この違和感。
人が変わったようなこの感じ。
それに服装も今までとはまるで違う。
この子は....本当に桃子なの。
何も言えずに桃子を見つめる。
...まさか
何も言わない私を気にするそぶりもない桃子が見つめるその先を見て、唾を飲み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!