第19章 孕む

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「桃子...。あなた...」 「もういいの。だって...」 そう言う桃子の動きを目で追う。 桃子は愛おしそうにお腹を撫でていた。 「桃子...。ま、まさか...。あ、か、ちゃん?」 「うん」 「だ、れの子?」 「決まってるじゃない」 「トキ、さん?」 「うん」   「知ってるの?トキさんには言ったの?」 「ううん」 「は、早く言わなきゃ」 「ううん。いいの」 「いいのって桃子。どうする気?」 「もちろん産むわ」 「産むって、あんた」 「だってトキさんの赤ちゃんだもん。それだけで私は生きていけるから。ここにトキさんがいるって思えるから」 「いつから?いつ分かったの?」 「少し前から気分が悪いときがあるなって思ってた。でも色んなことで悩んでたから、これってストレスなのかなって思ってたんだ。でも生理がきてないことに気づいて。もしかしたらって病院に行ったの。そしたら赤ちゃんがいることがわかって。その瞬間私思ったんだ。この子のために頑張らなくちゃって。今はこの子のことしか考えられない」 「でもでも。言わなきゃ。そんな大事なのこと、あなただけの問題じゃないわよ」 「いやよっ。だって...。だってもし堕ろせって言われたらと思うと」 桃子は不安そうに両手でお腹を押さえている。 「いつもつけてなかったの?」 「ううん。つけなかったのは一度だけ。初めての時。そのあとはトキさん、ものすごく気をつけてた。私はもっとトキさんを感じたかったけど、トキさんがダメだって...」 「...それって、本当に...トキさんの子?」 「当たり前じゃないっ!私はトキさんとしか寝てないんだからっ!」 賑やかな中央芝生でもわかるくらい桃子の声が響き渡ると、不意に声が止み、好奇に満ちた目が注がれていた。
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