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少し冷えてきたこともあり、私たちは”喫茶OFF TIME”に移動し桃子を席に座らせる。私は熱いお茶を桃子の前に置いて座った。
「桃子、ちょっと落ち着いて。それで親には言ったんでしょうね?」
「ううん。言ってない」
桃子の返事に私は大きくため息をついた。
「言ってないじゃないわよ。すぐ言いなさい」
「言わない。だって言ったら生むの反対されるもの」
「そんなの当たり前じゃない。それよりあなた本気で産む気なの?」
「私。産むよ。誰が何と言おうと。一人ででも育てていく」
「なに言ってるの。一人でなんて無理に決まってる」
「そんなことない。私はできる。この子のためならなんだって」
「バカ!あんたみたいな世間知らずのお嬢さんに出来るわけないじゃない!」
思わず大きな声を出し、また周りの視線を浴びる。
周りを見ながらペコリと頭を下げて視線を戻すと、桃子はお腹を庇うようにして私を睨んでいた。
出会ったときの穏やかな桃子とは一変し、怖いぐらい本気の顔をした桃子に思わず後ずさるようにして息を呑んだ。
あまりの迫力に、私は「あんたがそうしたいならそうしたらいい。私は知らない」と言ってその場を立ち去った。
お店を出る前に振り返ると、桃子は不安そうにお腹を抱えていた。
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