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第20章 決断
スマホの画面にトキさんからの着信が表示されていた。
おそらく頼子から聞いたのだろう。
私はなぜかなんの感情もなくただ画面を見つめていた。
電話は切れ、そしてまたすぐ掛かってきた。
「もしもし」
「もしもし桃子ちゃん?トキです」
「はい」
「頼子ちゃんに聞いたんだけど、妊娠したっていうのは本当なの?」
「私産みます」
「ちょっと待って」
「ちょっと待ってってなんですか?私はずっと待ってました。トキさんのことをずっと」
「ごめん。言い方が悪かった。とりあえず会おう。会って話し合おう」
「話しても気は変わりません」
「そういうことじゃなくて。そんな大事なことを一人で決めちゃだめだ」
「それって、産んでもいいってことですか?」
「産むか産まないかも合わせて話しをしよう」
「産まないなんてありえないです」
「ごめん。なんて言ったらいいのかな。僕の子だとしたら、それは桃子ちゃんだけの問題じゃないんだから」
「それって疑ってるんですか?私はトキさんとしかしてません」
「ごめん。疑うような言い方になってしまって。電話じゃなくて会って話しをしたい。お願いだから」
「ずるいです。私ずっとお願いしてましたよね?会いたいって。会って話したいって。ずっと」
「それはそうだけど、それは桃子ちゃんのことを思ってのことだったんだ。会ってしまえば、離れられなくなるのが分かってたから。でも子供が出来たのなら話は別だよ。本当に大切なことなんだ。だから会ってほしい」
「分かりました」
次の日、急遽休みを取ったトキさんといつもの喫茶店で待ち合わせをした。
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