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「異端の夢想家」こと物理学者のY博士は人類初のタイムマシンを完成させた。
彼の発明したタイムマシンに乗って時空旅行を行った1人目はまだいない。
そう、1人目は。
おかしな話である。タイムマシンに乗って時空旅行を行った人物がいることはそれを作った張本人がよく知っている。
しかし、その証拠は存在しない。いや、証拠は存在していたが、最初から存在していなかった。
尤も、この問題はY博士しか知り得ないため、いくら世間に公表したところで「売名の為の作り話」と一笑に付されるだけである。
それに、対価はしっかりと彼の手元に残っているので、今更これに関して触れる気は毛頭無かった。
その後は何食わぬ顔でタイムマシンレンタルの広告を拡散し続けた。
お陰でY博士の思惑通り、巨万の富と歴史に名を刻むほどの名声を手に入れ、栄耀栄華な余生を満喫し、世を去った。
Y博士はこの問題の真相を解明したが、世を去るその瞬間まで決して表沙汰にすることは無かった。
「――あの写真を燃やしたのがそもそもの始まりだな。ゼロが本当にゼロになってしまったんだから」
—完—
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