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「異端の夢想家」という渾名(あだな)で誰からも相手にされない孤高の物理学者Y(本人の意向でイニシャル表記。以後、Y博士とする)は数十年の月日を費やして遂に人類初のタイムマシンを完成させた。  だが、当の本人はタイムマシンを使っての時空旅行には微塵も興味が無かった。あくまでもタイムマシンは富と名声を手に入れ、何一つ不自由無い余生を送るための手段でしかなかった。  そのため、タイムマシンを日本円で約100億円でレンタルする広告を世界中に拡散した。  大層法外な価格であるが、それで空想でしかなかった時空旅行を自身の思うがままに堪能出来るのであれば安いと考える者も存在した。  応募は僅かな期間で殺到した。  Y博士は旅行者第1号を誰にするか迷っていた。当然の話だが、応募者のほとんどは資産家やセレブで占められていた。  だが、Y博士と親交どころか面識のある者は一人も居なかった。  正直、誰でもいいんだが、どうせ名誉ある第1号に据えるのであれば、その後に自身に莫大な利益を運び続けてくれる青い鳥のような人間が断然いい。  贅沢な悩みを抱えている彼の研究所に一人の謎めいた人物が訪れた。
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