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 調査の結果、ゼロの提示した小切手は本物であることが証明された。  Y博士は内心大喜びで、先客たちを跳ね()けてゼロを時空旅行の第1号として契約を結んだ。  タイムマシンはY博士の研究所地下スペースに厳重に保管されている。  それは楕円状の乗り物で寒々とした白色以外何のデザインも施されていないシンプル且つ物寂しい外観であった。 「これが本当にタイムマシンなのか?そう言いたいんだろが、正真正銘タイムマシンだ。見掛けで落胆されるのは、私としては不愉快だがな」  独り言ながら言葉に熱が入るY博士を他所にゼロは足早にタイムマシンへと 乗り込んだ。 「おいおい。一人で勝手に乗り込んでどうする?まだ詳しい操作方法を教えていないのに」 「……大丈夫。全部分かるから」  弱々しくもどこか重みのあるように言うと、不思議なことにゼロは慣れた手つきで操縦席のパネルを操作し始めた。  (はた)から見ていたY博士は口をぽかんと開けたままただその様子を見ているしかなかった。  暫くして操作を終了したゼロはおもむろにY博士の方を振り返った。 「それじゃ、行ってくるから」  素っ気なく言うと、ゼロを乗せたタイムマシンはその場から消え去った。  はっと我に返ったY博士はすぐさま近くに置いてあったタブレットを取り出し、手早く操作し始めた。  すると画面上には、ゼロが設定した情報が一瞬にして浮かび上がってきた。 「私としたことが、色々理解が追い付いていないんだが。それよりもあいつは一体どこへ行ったんだ?」  調べていくと、ゼロが設定した時空旅行先は今から約500年前のヨーロッパであることが分かった。 「今から500年前のヨーロッパって言うと、ルネサンスの辺りか。レオナルド・ダ・ヴィンチにでも会いに行ったのかな?」  Y博士はどこか(あざけ)るような笑みを浮かべた。
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