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「あの男の行き先は、隣の国なのでございます」
「なんと……」
隣国は、この国の最大にして唯一の敵対国だった。
「そうだったか、隣の国へ行ってしまったのか。まあ、それもルールだから仕方がないのだが」
「さらに、これはもっと申し上げにくいことなのですが」
「なに? まだあるのか。申してみよ」
「はい。あの男は敵国に行ったばかりでなく、敵国の軍隊に入隊し、その前線で我が軍相手に戦っている模様なのです」
「今は私たちの敵……というわけか」
「はい。しかも敵軍の有能な軍師を身を挺して守ったり、危険を顧みず軍隊の先頭で兵として戦ったり。かなり活躍しているらしいのです」
「それはまことに残念な話だ」
「まったくでございます」
「私は疲れたので、少し休みを取る。そのほうも下がってよいぞ」
「ははっ」
王様は寝室へ行き、ベッドに横になった。
そして、かつての配下だった馬丁の男の顔を思い浮かべる。
たしか馬丁の愛称は「歩兵」で、文字通り「馬」という有能な軍師の世話係だったはず。
「馬」は「竜王」と並んで軍の中でも強力な軍人で、かつての名前……出世する前の名前は「角行」だった。
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