免疫反応

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免疫反応

「院長のお孫さん、緊急ということで先にお通しします」  外来の診察の合間に看護師から告げられて、俺はにわかに緊張した。  出現頻度は低いものの、ワクチンの副反応にはエグいものがある。 「失礼します!」  勢いよく診察室の戸が開いて、子供を抱いた女が飛びこんできた。  子供の顔色は問題なさそうだ。意識レベルも正常に見える。 「どうした?」  聴診器を耳につけながら尋ねた。  どちらかというと女の方が具合が悪そうだ。顔面が蒼白で、苦しそうに息をついている。 「あ、愛香さんの、腕が、腫れて……」  女は息の合間にそう言って、袖をまくって子供の腕を見せてきた。 「腫れてるな」 「はい」 「え?それだけか?痙攣したとか」 「あ、少し痒みもあるようで。腫れてるところ触ると熱くて……」  拍子抜けした。この女、予防接種を受けたことがないのか。 「手遅れになったらどうしようって心配で、それで連れてきたんですけど」  至って真剣なようだ。  俺は、接種後の注意事項が書かれた紙を差し出した。 「ワクチン打ったんだから、そりゃちょっとは腫れる。順番を割りこんでまで俺に見せにくるようなことじゃない」  どんな反応をするか見たくて、わざと意地悪な言い方をした。  女はその紙を食い入るように見ると、顔を上げて俺を睨みつけてきた。 「こんなの頂いてませんし、説明も受けてないです」  そう正論をぶつけてくる。  ああ、こういう勝ち気な女、すげえ好き。
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