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『兄貴を殺したお前だけ幸せになれるとか思うなよっ!』
思ってないさ。
俺には幸せになれる資格ないんだからさ。
『何かあれば連絡してきてね』
密かに淡い恋心を抱いていたあの人は俺にそう言った。
言えるわけない。
だってこれは俺の問題だから。
それから月日は流れ。
俺は大学生になった。
「好きです!」
何度目かわからないけど、俺は女の子に告白された。
俺は猪熊由貴。
都内の某私立大学に通う大学生だ。
でも、俺の返事は必ず決まっていた。
「ごめん。俺、女の子に興味ないんだ」
「そっかそうだよね」
告白してくれる女の子たちには悪いけど、俺はそう答える。
仕方ないじゃん。
だって俺は、世間じゃ
ゲイってヤツだから。
「はぁ」
毎回のことながら気分が滅入る。
俺を知る友人は仕方ないって言ってくれるけど。
「由貴ーまた告白かよ」
「純。あ、うん。まぁな」
こいつは假屋純平。
俺がゲイだと知る数少ない友人。
「落ち込むなよ!こればかりは仕方ないじゃん」
「わかってるけどさ……」
断った女の子たちが気の毒でならない。
どうしたって俺は女の子たちにそういう好意を抱けない。
それに俺は好きな人がいる。
気持ちを伝えるつもりはない。
そばにいるだけでいいから。
そう。
そばにいるだけで。
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