Honeymoon 後編 【80,000スター御礼】

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Honeymoon 後編 【80,000スター御礼】

瞼に日の光を感じてゆっくり意識が浮上する。 最初に気づいたのは、少し先で聞こえる波の音。 そして、いつもと違う枕の感触。 …あぁ、そうだ、悠哉さんと旅行に来たんだっけ。 横向きになっていた身体をゆっくり起こして、光の差す方へ顔を向ける。 開かれたカーテンから、柔らかな日差しが差し込んでいた。 ベッドから海は見えないけど、波の音は絶えることなく聞こえている。 奥のキッチンで物音がして、密やかな足音が近づいてくる。 「…悠哉さん?」 ソファに座ろうとしていた彼は、私に気づくとそのままベッドに近づいてきた。 「おはよう、妃奈」 ベッドの脇に腰掛けると、私の髪を撫でて額にチュッとキスをする。 「今、何時くらい?」 「8時過ぎだよ。まだ寝ててもいいよ?」 ううんと首を振る。せっかくの旅行なのに、寝てるなんてもったいない。 「ごめんな、夕べ、先に寝ちゃったんだな」 ううん、とまた首を横に振って 「疲れてたでしょ? 気にしてないよ」 「だってほら、ハネムーンだし…」 その言葉の裏にあるものには、触れないようにしておく。だってまだ朝だし…。 「せっかく可愛いの着てたのに…」 そう言って、私が着ているルームウェアの襟元をつまんだ。 スクエアに空いた胸元にレース、少しピンクかかった白いワンピースタイプ。 敢えてサテンやシルクではなく、コットン素材にしたから、ルームウェア、だと思う。 ネグリジェと言うほど、色っぽくはないはず… 彼は私を見下ろして、頬を撫でる。 朝なのに、彼の瞳は充分な甘さを湛えている。 「いつも見ているはずなのに、なんでかな? 今日は一段と可愛い」 そう言って、また額にチュッとキスをする。 あぁぁ…砂糖10倍増し攻撃だ… 旅行中、この攻撃に耐えられる気がしない。 「コーヒー淹れたよ、飲む」 うん、と頷くと。 「ベッドまでお持ちしましょうか? お(ひめ)様」 そう言って笑う。名前を(もじ)ったな…。 「起きるよ。そっちに行く」 そう言うと彼は、私の腕を引っ張って起こしてくれた。
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