Honeymoon 後編 【80,000スター御礼】

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一度キッチンを抜け、トイレを済ませてバスルームで顔を洗い、口をゆすぐとリビングへと戻る。 開けられた窓に近づき、テラスの向こうの海を見やる。 穏やかな晴天の下、波が絶えず押し寄せている。 一番海側の建て物だけど、さすがにこの格好でテラスに出るのは憚られた。 彼も、寝間着がわりのスウェットにTシャツのままだ。 ソファに座ってカップを手に、タブレットでニュースなんかを見ている。 リビングのテーブルに置かれたマグカップには、たっぷりのコーヒーが注がれ、湯気を立てている。 彼の隣に座って、コーヒーを一口飲む。 「おいし…」 思ったより喉が渇いていたようで、ほろ苦く暖かなそれが、身体に染みこんでいく。 彼はタブレットをテーブルに戻すと、半身をこっちへ向けた。 「今日はどうしようか。昼と夜の食事も考えないとだし。  レストランを覗いて、市場にも行ってみる?」 「うん、行きたい。その場で調理してくれるお店もあるんでしょ?」 「そうみたいだ。まあ、海のものは何でも食べれるんじゃないか?」 楽しみ…と呟く。 「朝ごはんは作らないとだね」 「卵とベーコン焼くくらいだろ? 俺がやるよ」 「じゃあ、私はパンの担当ね?」 「バターは冷蔵庫に入ってたけど、おいしそうなジャムも付いてたよ」 そうなの?とパンの入っている籠を見に行くと、『農家の自家製 ブルーベリージャム』と手作りのシールが貼られた小瓶が入っている。 「これは、ヨーグルトに入れてもおいしそうだね。スコーンもいいかな?  そういうのもあったら買ってこようか…」 そう言いながら振り向こうとして、背後から悠哉さんに抱きしめられた。 「…妃奈」 ジャムの瓶を持ったまま、固まった私の耳元に口を寄せてくる。 「…そんな可愛い格好でふらふらしてたら、妃奈の方を先に食べちゃうよ?」 耳元で囁かれる声に、心臓がドキリと音を立てる。 彼は私の髪に顔を埋めて「どうしようか…?」と囁く。 「…えっと、あの、着替え…ます」 固まったままそう言うと、彼はクスクスと笑って身体を離した。 「もう、からかっただけでしょ?」 ソファに戻っていく彼に、そういって怒るフリをした。
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