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「妃奈、水飲む?」
ホテルのレストランで食事を終え、部屋に戻ると、悠哉さんがそう聞いてくれる。
うん、と頷くと、取りあえず持っていたミニバッグをリビングに置きにいく。
キッチンスペースに戻っていくときも、足元がおぼつかなくなっているのがわかる。
…ちょっと飲み過ぎちゃったな。
自分がそれほどアルコールに強くないことは分かっているのに、ハネムーン最終日の夜だし、このあとは部屋に戻るだけだから、という気持ちがあった。
料理をシェアして食べながら、彼が美味しそうにワインを呑んでいるのを見て、私もこれまで呑んだことのないものを味わってみようと、カクテルを2~3杯もらったからそのせいだろう。
悠哉さんが、水のグラスを差し出してくれている。
近寄って受け取ろうとしたのだけど、自分が思っていたより彼の手が遠くにあって落としそうになり、慌ててさらに手を伸ばす。
落とさずに済んでホッとしたのを隠すように、カウンターに寄りかかって水を飲んだ。
「…ひ~な」
ん…? と彼を見返すと、私の身体の両側に手を突いて囲い込み、顔を覗き込んでくる。
「…酔ったの?」
彼がちょっと悪い顔で聞いてくる。
素直に頷くのがちょっと怖くて、素知らぬ顔で水を飲むふりをする。
無言で私の様子を見ていた彼が、ゆっくりとグラスを取り上げてカウンターに置いた。
すうっと顔が近づいて来て、柔らかく唇が触れる。
そのまま優しく唇を食まれ、思わず目を閉じてしまった。
触れているのは唇だけ。
そのことがなぜか特別な気がして、されるがままに身を任せる。
彼が唇を食むテンポも、顔の角度を変えるタイミングも、自然に分かってしまう。
静かな室内に、お互いの吐息だけが聞こえる。
「…大丈夫、俺も酔ってるから」
そう言うと、口づけが深くなってスルリと舌が入ってきた。
軽くカウンターに押しつけられるように身体が触れ、彼の手が私の襟元に掛かる。
今日はマキシ丈の白いワンピース。
綿混素材で、ボヘミアン風にシンプルなレースが袖や裾にあしらわれたもの。
首元もウエストもゴムのシャーリングが入っているので、脱ぎ着がラクなリゾート仕様だ。
「…これ、脱がせてみたかった」
彼の手は右の首元から、ワンピもキャミもブラの紐も一緒に引き降ろした。
一気にそうされるとは思っていなかったので、思わず、あっ…と声が出てしまう。
下着の間に入った手が、簡単にブラの留め具を外し、左の胸が露わになる。
「あっ…悠哉さん…んっ」
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