Honeymoon 後編 【80,000スター御礼】

12/12
前へ
/134ページ
次へ
「素敵なハネムーンだったね、ありがとう」 私がそう言うと、彼は私の背中に腕をまわしてチュッと額にキスをした。 「まあ、こっちに来てからは何もしなかったけどな」 「何もしない、贅沢な休みだったでしょ?」 最終日、私たちはまた、海に降りてきていた。 もう荷物はできていて、あとはチェックアウトするだけだ。 雨上がりの空は青く澄んでいる。 昨日の雨のせいか海の水が冷たそうなので、波の来ないところに立って海を眺める。 繰り返し打ち寄せる波の造形と、その波が立てる静かな音に、人は癒やされるのかな、と思う。 社会のしがらみに巻き込まれて生きている人を、一時、素の状態に戻していくかのようだ。 「…濃密な4日間だったな」 悠哉さんが言うのは、どのことを指すのだろう。 頷いていいものなのか、どうなのか… 「いろんな妃奈も見れたし…」 彼は、私を見てニヤリとする。 私は急に体温が上がったような気がして、彼の背中をバシっと叩いた。 夕べはキッチンで、一昨日はソファで、彼に抱かれた。 自宅のマンションでは、キッチンはともかく、リビングのソファでもしたことがなかった。 多分、キッチンは生活の場で、リビングは彼の大事な仕事場だからだ。 いつもとは違う場所に、旅行に来ているという特別感が、私にも、彼にもあったのだと思う。 結局夕べは、キッチンでお互い達した後、ベッドへ連れていかれ、彼の良いように抱かれた。 正直、あまり詳しく覚えていない。 眠りに落ちる前にしっかり水を飲まされたので、なんとか今日は二日酔いにならずに済んだ。 「昨日の妃奈も、一昨日(おととい)の妃奈も、もちろん今日の妃奈も大好きだよ。  俺は毎日、妃奈に惚れ直してる」 彼はそういうと、私の腰を抱き寄せた。 「もう一生離さないから覚悟して…」 彼の顔が近づいてきて、私は慌てて被っていた帽子を傾けた。 私がそうするのを、彼はきっと分かっていたと思う。 顔が離れたとき、ふふっと笑ったから…。 「来年もどこかに行こうな。結婚一周年のハネムーン」 そうしてまた、今回みたいに甘やかされるんだろうか。 「その時を楽しみに、お互いしっかり働こうね、…ダンナ様」 彼は目を丸くした後、無邪気な顔になって笑った。 私は少し伸び上がって、彼の頬にチュッとキスをした。 【end】
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6675人が本棚に入れています
本棚に追加