曖昧な関係

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曖昧な関係

目覚めると、ベッドに一人だった。 枕元にあったスマホを見ると、もう8時を過ぎている。 慌てて起き上がってみると、彼が寝ていたであろう場所に、畳まれた洋服が置いてある。 広げてみると、ふんわりとした丈長のチュニックブラウスと同系色のタンクトップ。 今日はスカートじゃなくて、白いコットンのスキニーパンツ。 これを着て、ということだな、と思って、ベッドから立ち上がる。 まずスキニーを履いてみる。 膝下はぴったりしているけど、股やお腹周りは少しゆったりになっていて、『大人可愛い仕様』になっていた。 タンクトップはグレー掛かった水色で、その上に同系色の薄い水色のチュニックブラウスを重ねる。 チュニックは股辺りまである丈で、丸首の短い立ち襟。首元にはボタンが縦に3つ並んでいる。 胸のあたりで切り替えになっていて、1.5倍くらいの布地が細かいタックになって縫い込まれている。 この生地はシフォンかジョーゼット。まず自分では買わないおしゃれな服だ。 袖はチューリップの花びらを一枚縫い付けたような、上品な形だ。 クローゼットの扉につけられた全身鏡の前に立つと、仕事の時とは違う自分がいた。 リビングへ出て行くと、彼はいなかった。 それでキッチンに入ると、昨日と同じように新聞を読んでいる彼がいた。 「おはよう」 私に気づいて顔を上げた彼に、そう言って近づくと、今日は、新聞から手を離して腕を広げる。 「おはよう」 私を自分の膝の間に入れ、軽く右足の上に座らせると、腰を抱いてキスをする。 「可愛い」 着ているものを見て、満足そうにそう言い、私の髪を触る。 今日の彼は、薄いブルーのシャツにジーンズ。 眼鏡はないけど、髪はきれいにまとまっている。 束ねていない私の髪を撫でて満足そうな彼は、話しながら間にキスをする。 「甘やかしているふりして、俺も妃奈に甘えてる。なんか不思議な感じだ」 それで私も、彼の首筋に腕を巻き付けて甘える。 「こんなふうに、変に格好つけなくていいところが、大人の恋?」 「そうかも」 そういって、ちゅっとキスをする。 一度顔を見て、今度は頬に、また顔を見て、今度は鼻に…。 私が笑うと、彼もふふっと笑って、今度は柔らかく唇を塞がれる。 ゆらりと身体を揺らされて、思わず肩にしがみついてしまう。 腰を抱いた手が、背中を包み込む。 少し顔が離れると、鼻と鼻を軽く擦り合わせてくる。 お互いに笑みが溢れる。 「…まずいな、このままいくと止まらなくなる」 彼はそう言って顔を離した。 「朝飯食べよう。白米食べたくなってさ、炊いてある」 テーブルの上に、冷蔵庫にあったらしいおかずが数品出してある シンクの横に小さめの炊飯器があり、茶碗も出してある。 「味噌汁はインスタントだけど、良かったら」 そう言って、ふたりで準備をすると、座ってご飯を食べた。 「何時頃、帰る?」 ちょっと考えて 「さすがに洗濯はしないとだから、お昼過ぎには」 「車で送るから、心配しなくていい。もう9時になるから、昼は2時くらいに食べて送っていくのは?」 「分かった。ありがとう」
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