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自分の肌を滑る私の指を捕まえて、唇に当てる。
「どうやら、そこから発展できそうな相手を見つけた、と言うことに…」
喋りながら、私の手を唇が滑り、手首から腕へと辿っていく。
「…運命の相手は、こんなに簡単に見つけられるもの?」
彼を牽制するように、そう言ってみる。
「いや、簡単じゃないし。そう考え出してから3年は経ってる。
いろんな女性に出会うたびに、この人はどうだろう、と観察してきた」
「どんなチェックリスト?」
「まず、子どもっぽいのと、既婚者とか相手がいる人はだめ。
ある程度、恋愛経験のある大人の人で、できれば自立心が強くて自分の世界を持っている人。
一度関係を持ったら、それを笠に着たり、べったりくっつかれるのは勘弁して欲しいし、仕事の邪魔もされたくない。
まあ、容姿は二の次だけど、外見を気にしなさすぎる人も好きじゃない。
そんな都合の良い人が見つからなければ、俺の今生はそういうもんなんだと」
「都合の良い人…」
「悪い意味じゃないぞ。妃奈が俺の担当になって2年、仕事の仕方や性格は合格ラインを越えていて、あとはプライベートをチェックすれば良かった」
一度言葉を切って、私の顔を見る。
「男の影はなさそうだと思っていたけど、最後に付き合ったのは二股男で、もうこりごりだとか?
仕事一筋だとかいうくせに、好きな作家は?と聞いてみれば恋愛小説を書く人ばかり。
アクセサリーはハートとか、王冠とか? 本能的には女子なんだろうな、と…」
言い当てられて口ごもる。でも黙ってしまうのも癪なので
「眼鏡の奥から、そんな風に見られていたとは」
と、若干責める口調で言ってみる。
「こうなってみると、候補者さえ見つかれば、運命の相手に育てていく、ということもできそうだと思うぞ。違うか?」
腕の中にいて、こんなに心地よいのに、それを覆すことが言えるはずがない。
掴まった腕は、またシーツの上に押しつけられて、上になった彼の唇は二の腕の内側を滑っていく。
こんなところにも気持ちのいいポイントがあるんだと、さっき知ったばかりだ。
肘を捕まれて、ベッドに固定される。
黙った彼の唇が、柔らかく二の腕の内側を食む。そして、舌先で皮膚の感覚を呼び起こす。
舐めるというよりは、皮膚にそって舌で辿っていく感じだ。
唇が脇に近寄っていくと、思わず吐息が漏れた。
それはきっと無意識ながら、あらわになった胸の先までその刺激が来るかも、という期待感かららしい。
「ふっ。良い反応…」
…男の人に身体を開いたのは久しぶりだ。
それなりに満ち足りたはずなのに、こうやってされると、また期待してしまう自分がいる。
「妃奈はバストがコンプレックスのようだけど、大きければいいわけじゃない。それに感度は抜群だ。こうやって…」
舌先だけで、胸の先端を転がされる。
「ふうっ…」
腕が固定され、突き出された形の胸をどうすることもできない。
「ちょっと触れただけで…」
今度はとがった先を無視して、輪郭に沿って舌の先が回る。
「は… ぁ…」
「もっと欲しがってくれる」
舌は胸の丘を降りて、脇腹にそって脇の下まで上がってくる。
「あ、やめて…」
脇の下の窪みの縁が、思った以上に感じるのだ。それも腕が固定されているから感じるのだ。
「やめるの? こんなに気持ちいいのに?」
顔を上げて、私の目を見る。
…きっともう、そういう顔になっている。恥ずかしい。
「やめて、は、もっとして、の意味だと、どこかの本にあったな。違う?」
…違わない。けど言えない。
黙った私に見せる、いたずらっぽい悪い顔。
「セックスは、女性の身体を開発していくことでもあるんだな」
露骨に言わないでほしい。
「あとで、俺の身体も開発してくれ」
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