ふたりだけの… 【60,000スター御礼】

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ふたりだけの… 【60,000スター御礼】

ステンドグラスを通して差し込む光が、床をやんわりと色付けている。 中央の柱には白く大きな十字架がはめ込まれていて、その前に演台が置かれている。 今、その演台の上には、白い楕円のケースが乗っている。 「妃奈乃…」 そのケースを開け、指輪を取り出すと、悠哉さんは私の左手を取った。 「これからの人生も、ずっと一緒に…」 彼はそう言って、私の左手の薬指に指輪を通してくれる。 「…私を選んでくれてありがとう。これからもよろしくお願いします」 私もそう言って、彼の薬指に指輪を差し込んだ。 向かい合って、軽くキスをする…その後、2人で顔を見合わせて、ふふふっと笑った。 ここは街中にある、一般的な教会。 夕方の5時、神父様も来場者もいない。 それどころか、私は仕事先から直行の格好だし、悠哉さんもいつものカラーシャツにジーンズ。 すぐ後ろの長椅子には、私の仕事用バッグと、彼の取材用バッグが置かれている。 イニシャルの刻印をお願いしてあった結婚指輪ができあがり、式をしない私たちは、どのタイミングから指輪をするか考えていた。 それで、ショップから受け取ったまま、マンションに保管してあったのだ。 お互い、こういう茶目っ気があるところは似たもの夫婦なのか、だったら限りなく正規の結婚式に遠い感じでやってみよう、という話になり、普通の日に、仕事の合間に、ふたりきりの結婚式をあげよう、と言う話になったのだ。 バージンロードを歩くこともなく、今日はブーケも持っていない。 ただ教会で落ち合って、多分、ここで誓いの言葉を言うんだろうな、という場所に立って、指輪の交換と誓いのキスをしただけ。 でも、なんか私たちらしくて良いかも、と思えた。きっと彼もそう思ったから、笑ったんだと思う。 この教会は、先日フォトウエディングを撮影してもらった石川ご夫婦に教えてもらった。 ステンドグラスが見事なので、出張撮影にここをお借りすることがあるそうだ。 教会なので、昼間は誰でも出入りできるようになっている。 神父さんもお願いすれば来てくれる、という話だったけど、なぜか二人きりでやりたくて、誰にもお声を掛けずにやってみた。 参列者が座る椅子に、小振りの三脚を立てて、いつも彼が取材に持ち歩いているコンパクトカメラを乗せ、タイマーで写真を撮った。 「…ふたりだけの結婚式、良いかも。どこかに書こうかな」 悠哉さんはそう言って、後ろにずらっと並んだ4~5人掛けの椅子の、最前列中央に座る。 その横をポンポンと叩いて呼ぶので、私もそこへ座った。 左手を上げて、指に収まった指輪を見る。 やっと、結婚したんだな、という実感が込み上げてきた。 「どんな気持ち…?」
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